「GJB2遺伝子に変異があります」と説明を受けても、初めて聞く言葉に戸惑う方は多いのではないでしょうか。
GJB2遺伝子は、先天性難聴の原因として最も多く知られている遺伝子の1つです。特に日本人では「235delC」という変異が多く見られ、新生児聴覚スクリーニングや遺伝子検査をきっかけに知る方も少なくありません。
この記事では、GJB2遺伝子の役割や難聴との関係、日本人に多い235delCの特徴、遺伝の仕組みや治療法について、できるだけわかりやすく解説します。
GJB2遺伝子とは?
GJB2遺伝子は、私たちが音を聞くために欠かせない働きを担う遺伝子です。まずは、GJB2がどのような役割を持ち、耳のどこで働いているのかを見ていきましょう。
GJB2(Connexin26)の役割
遺伝子とは簡単に言うと私たちの体を作る設計図になります。
GJB2遺伝子はコネキシン26(Connexin26)というタンパク質をつくるための設計図になります。
耳のどこで働いているのか

コネキシン26は耳の内耳という部分にある蝸牛というカタツムリの様な形をした器官に作用します。
コネキシン26は細胞同士をつなぎ、音を感じるためのカリウムイオンを運びます。
なぜ異常が起こると難聴になるのか
GJB2遺伝子に異常が起こると、この音を運ぶカリウムイオンが内耳の細胞間でうまく情報伝達ができなくなります。
そうなると耳は音を電気信号にうまく変換できずに難聴になってしまいます。
GJB2遺伝子による難聴の特徴
GJB2遺伝子による難聴には、ほかの遺伝性難聴とは異なるいくつかの特徴があります。難聴の程度や進行性の有無などについて解説します。
非症候群性難聴とは
GJB2遺伝子による難聴の特徴として、非症候群性難聴ということがあげられます。
非症候群性難聴とは難聴以外の合併症がない難聴のことをいいます。
他のことが原因になると、難聴以外にも視力の低下だったり、心臓の病気などの難聴以外の病気も併発することがあります。
難聴の程度(軽度〜重度)
GJB2遺伝子変異による難聴の重症度では振り幅が大きく、軽度難聴から重度難聴まで可能性があります。
軽度難聴では日常会話が可能な場合もありますが、騒がしい場所では聞き取りづらさを感じることがあります。加齢に夜難聴なんかでは軽度は見過ごされるケースもあります。
重度では、補聴器や人工内耳でも完璧に補助するのは難しいほどの重症度になります。
進行することはあるのか
GJB2関連難聴は比較的進行しにくいとされていますが、一部では聴力の変化が報告されており、定期的な聴力検査が推奨されています。
日本人に多い「235delC」とは?
GJB2遺伝子について調べていると、「235delC」という言葉を目にすることがあります。ここでは、日本人に多いとされる235delC変異について紹介します。
235delCの意味
235delCとは遺伝子の変異の仕方のことをいい、遺伝子の一部が欠けてしまう変異です。
日本人のGJB2遺伝子の変異としてはではこの235delCが有名です。
日本人に多い理由
残念ながら厳密に日本人に235delC変異が多い理由は解明されていません。
説としては、創始者効果とよばれる考え方です。
これは、遠い祖先が持っていた遺伝子変異が、長い年月をかけて子孫へ受け継がれてきたという考え方です。
遺伝子検査でどのように分かるのか
聴覚に関係する遺伝子は100種類ぐらいあるとされていて、GJB2遺伝子もそのうちの1つです。
遺伝子検査では、それら遺伝子に変異があるかどうかをチェックすることができます。
遺伝子検査について詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。
GJB2遺伝子はどのように遺伝する?
GJB2遺伝子による難聴は、主に「常染色体劣性遺伝」という形式で受け継がれます。遺伝の仕組みを知ることで、「なぜ子どもに難聴が起こったのか」を理解する助けになります。
常染色体劣性遺伝とは
GJB2遺伝子は常染色体劣性遺伝です。
遺伝子は両方の親から1つずつ染色体をもらってくるのですが、その両方に変異があった場合だけ症状が発現するという遺伝です。
難聴の遺伝について詳しく紹介した記事もあるので、ぜひご覧ください。
両親が保因者の場合の確率
保因者とは2本あるうちの片方だけ変異を持っている人のことをさします。
親が2人とも難聴でなくても、子どもにGJB2遺伝子変異があり先天性難聴になる場合があります。
たとえば両親が2人とも保因者だった場合考えられる遺伝子の組み合わせは
- 変異なし-変異なし
- 変異あり-変異なし
- 変異なし-変異あり
- 変異あり-変異あり
となり、25%の確率で子どもにGJB2遺伝子変異があらわれます。
保因者は難聴になるのか
保因者自体にはGJB2遺伝子変異は見られないので、GJB2遺伝子起因による難聴は現れません。
ただ難聴にならないわけではなく、それ以外の環境要因による難聴だったり、他の原因で難聴になることは十分にありえます。
新生児聴覚スクリーニングとの関係

GJB2遺伝子による難聴は、新生児聴覚スクリーニングやその後の精密検査をきっかけに見つかることがあります。ここでは、発見までの流れについて見ていきましょう。
いつ見つかることが多い?
新生児聴覚スクリーニングは子どもが産まれて数日で実施されます。
その際、問題なく聞こえていると思われる場合はpass(パス)、難聴の疑いがあればrefer(リファー)となります。
ただ、この段階では羊水が耳に残っていたりとreferになっても難聴は確定ではなく、再検査によってパスになることも多いです。
GJB2遺伝子変異による難聴は新生児聴覚スクリーニング後の精密検査で判明します。
精密検査の流れ
新生児聴覚スクリーニングは世界的に1-3-6ルールという流れで行われます。
生後1ヶ月までに初期検査から再検査を実施し、生後3カ月までに精密検査の実施、精密検査6ヶ月から療育の検討という流れになります。
新生児聴覚スクリーニングについて詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。
遺伝子検査を受けるタイミング
遺伝子検査を受けるかどうかは家庭ごとに考え方が異なります。原因遺伝子が分かることで、今後の経過や遺伝カウンセリングの参考になる場合もあります。一方で、検査結果によって治療方針が大きく変わらないケースもあるため、主治医と相談しながら検討するとよいでしょう。
GJB2とOTOF・SLC26A4の違い

GJB2以外にも、難聴に関係する遺伝子は数多く存在します。代表的なOTOFやSLC26A4との違いを比較してみましょう。
OTOF遺伝子について詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。
SLC26A4遺伝子について詳しく紹介した記事があるので、こちらもぜひご覧ください。
GJB2関連難聴の治療法

現在のところGJB2遺伝子そのものを治療する方法は一般的ではありません。しかし、補聴器や人工内耳などによって聞こえをサポートする方法は確立されています。
補聴器
GJB2遺伝子による先天性難聴の場合、中度から高度難聴では補聴器による補聴は非常に有効です。
人工内耳
人工内耳も補聴器同様に非常に有効な手段です。
人工内耳の場合は高度から重度難聴でより効果的です。
遺伝子治療研究の現状
現在遺伝子治療の研究がされており、一部研究では聴力の回復にも成功しています。
現状ではまだ実用段階には至っていませんが、近い将来実用化が期待されています。
まとめ
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- GJB2は先天性難聴の代表的な原因遺伝子
- 日本人では235delCが有名
- 多くは非症候群性難聴
- 補聴器・人工内耳で良好な経過をたどるケースも多い



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