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耳が遠い親に大声で話すと逆効果?「うるさい」と言われる理由=補充現象をわかりやすく解説

難聴
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あなたは、耳が遠くなってきたお父さん・お母さんに大きい声で話しかけていませんか?「聞こえないみたいだから」と声を張り上げたのに、「そんなに怒鳴らなくても聞こえてる!」と言われてしまった。介護をしている方なら、一度はこんな経験があるのではないでしょうか。

聞こえにくいはずなのに、大きい声はうるさい。一見矛盾しているようですが、これには「補充現象」という耳の症状が関係しています。

この記事を読めば、耳が遠い人に大声が逆効果になる理由と、家族が今日からできる伝わる話し方がわかりますよ!

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結論:耳が遠い人に大声が逆効果になる理由

先に結論をお伝えします。

  • 年齢による難聴の多くでは、「小さい音は聞こえないのに、ある大きさを超えると急にうるさく響く」状態が起こる。これが補充現象
  • 大きい声にしても言葉の聞き取りやすさは上がらず、うるささだけが増える
  • 大切なのは声の大きさではなく、ゆっくり・はっきり・正面から話すこと

つまり「大きい声=伝わる」ではないんです。詳しく見ていきましょう。

補充現象(リクルートメント)とは?

補充現象とは、感音難聴で起こる聴覚過敏の症状です。英語では「リクルートメント(recruitment)」と呼ばれます。耳の症状というと「音が聞こえにくくなる」ことを想像しますよね。ですが実は、「音が大きく響きすぎてしまう」という症状もあるんです。

「小さい音は聞こえないのに、急にうるさい」

難聴でない人なら普通に聞き取れる音量が、聞き取れない。それなのに、ある音量を境に、一気に普通の人と同じか、それ以上にうるさく聞こえてしまう。これが補充現象です。

テレビのリモコンで音量を1つ上げただけなのに、急にドーンと大きくなる。そんなイメージに近いかもしれません。

「ちょうどいい音量」の幅がとても狭い

難聴でない人には、「小さすぎて聞こえない」と「大きすぎてうるさい」の間に、ちょうどいい音量の幅がたっぷりあります。補充現象がある人は、この幅がぎゅっと狭くなっています。

聞こえ始める音うるさいと感じる音ちょうどいい音の幅
難聴でない人小さい音から聞こえるかなり大きい音広い
補充現象がある人ある程度大きくないと聞こえない普通の人とあまり変わらない狭い

だから、少し声を大きくしただけで「うるさい!」の範囲に入ってしまうんです。

しかも厄介なことに、音の高さによってうるさく感じる大きさが違います。特に高い音や、食器がぶつかる音のような突発的な音に弱いのが特徴です。

音は大きいのに、言葉はわからない

音がうるさく響くうえに、言葉を聞き分ける力は落ちたままです。そのため、相手が何と言っているのかはわからず、ただ大きい音だけが聞こえてくるという状況になります。

どんな難聴で起こるの?

補充現象は、内耳(耳の奥)に原因がある難聴で起こりやすい症状です。

  • 加齢性難聴(年をとって耳が遠くなる)
  • 突発性難聴
  • 騒音性難聴
  • メニエール病

親御さんの「耳が遠くなった」は多くが加齢性難聴なので、補充現象が起きている可能性は十分にあります。

そもそも難聴に種類があるなんて知らなかった!というあなたは、難聴の種類について紹介した記事もあわせて読んでみてください。

難聴の種類について↗

補充現象はなぜ起こるの?

補充現象は、内耳にある「有毛細胞(ゆうもうさいぼう)」という細胞が傷つくことで起こると考えられています。専門的には、その中の「外有毛細胞」の働きから仕組みを説明できるとされています。

ざっくり言うと、外有毛細胞は耳の中の「自動音量調整係」です。

  • 小さい音は、外有毛細胞がぐっと増幅して聞き取れるようにする
  • 大きい音は、あまり増幅しない

この調整係が傷つくと、小さい音を大きくする働きがなくなります。そのため小さい音は聞こえないのに、大きい音はそのまま届きます。結果として「聞こえない」と「うるさい」の差が急に縮まってしまうんです。

なお、細かいメカニズムにはまだわかっていない部分もあります。

有毛細胞について詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。

有毛細胞について↗

こんな様子があれば補充現象かも(家族向けチェックリスト)

親御さんに次のような様子はありませんか?当てはまるものが多いほど、補充現象が起きている可能性があります。

□ 聞き返しが多いのに、大きい声で言い直すと嫌がる

□ 「怒鳴らないで」「うるさい」とよく言う

□ テレビの音量は大きいのに、急な効果音や拍手は嫌がる

□ 食器の音、ドアの閉まる音、子どもの高い声を不快がる

□ 人が多い場所やにぎやかな食事会を避けるようになった

□ 補聴器をつけても「うるさいだけ」と外してしまう

もちろん、このチェックだけで判断はできません。気になったら耳鼻咽喉科で相談してみましょう。

補充現象は病院でどう調べる?

補充現象は、耳鼻咽喉科で行う専門的な聴力検査で確認できます。難聴の原因が内耳にあるのか、それより奥(神経など)にあるのかを見分けるのにも役立つ検査です。

代表的な検査は次のとおりです。

検査名どんな検査?
SISI検査聞こえる音より少し大きい音を流し、その音がほんの少し(1dB)だけ大きくなったことに気づけるかを調べる。通常は1dBの変化に気づきにくいが、補充現象があると気づきやすくなる。
ABLB検査(バランステスト)左右の聴力に差がある人に行う。音を大きくしていくと、補充現象がある場合は左右の聞こえ方の差が小さくなっていく。
自記オージオメトリー本人がボタンを押しながら、聞こえる音の大きさの変化を自動で記録する。音の聞こえ方の特徴を調べる。

どの検査も、基本的には本人の感覚に頼るものです。親御さんが受ける際は、緊張させないよう付き添ってあげると安心ですよ。

耳の検査をしっかり受けるなら、耳の専門医がいる病院を選ぶのも大切です。

補充現象は治る?どう付き合えばいい?

残念ながら、補充現象そのものを治す治療法は今のところありません。加齢などで一度落ちてしまった聴力も、基本的には元に戻りません。

「耳がよくなる!」とうたう本やサプリを見かけることもありますが、ほとんどの場合、効果は期待できません。ただし、あきらめる必要はありません。上手に付き合う方法があります。

補聴器で「ちょうどいい音量」に合わせる

今の補聴器の多くはデジタル式で、音の高さごとに細かく調整できます。大きな音が苦手な人向けに、最大音量を本人が耐えられる範囲に抑える機能を持つものもあります。

つまり補聴器は、ただ音を大きくする機械ではありません。「小さい音は持ち上げて、大きい音は抑える」ことで、狭くなった「ちょうどいい幅」に音を収めてくれる道具なんです。

「補聴器はうるさいだけ」と外してしまう方は、調整が合っていないことも多いです。認定補聴器技能者がいるお店で、何度か調整してもらいましょう。

補聴器について詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。

補聴器について↗

集音器との違いに注意

補聴器は国が認めた管理医療機器です。一方、通販や家電量販店で売られている集音器は医療機器ではありません。

集音器は音をまとめて大きくするだけのものが多く、補充現象がある人にはかえってうるさく感じることがあります。

ただ、最近はアプリを使って自分の聞こえに調整できる機種もあるので、予算的に集音器をまずは試したいというのもありかと思います。

うちではOlive Smart Earという集音器があります。Olive Smart Earについて詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。

Olive Smart Ear について↗

突然聞こえなくなったら、すぐ病院へ

突発性難聴の場合、できるだけ早く治療を始めれば聴力がある程度戻る可能性があります。「急に片耳が聞こえなくなった」と気づいたら、すぐに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

家族ができる「伝わる話し方」のコツ

今でも、介護の現場などで「大きい声で話しかければ通じるから大丈夫!」という場面を見かけることがあります。ですが、補充現象がある人にとっては逆効果です。

目が悪くなったら見えやすいピントがあるように、耳にも聞こえやすい音量があります。その範囲はとても狭いので、声を張り上げるより「伝え方」を変えるほうがずっと効果的です。

こうするとNGこうするとOK
大きな声で怒鳴るように話すいつもより少しだけ大きめの、落ち着いた声で話す
早口でまくしたてる言葉を区切って、ゆっくり話す
後ろや横から話しかける正面に回り、目を合わせてから話す
マスクで口元を隠したまま話す口元が見えるようにし、口をしっかり開いて話す
テレビをつけたまま話すテレビや換気扇を消して、静かな場所で話す
伝わらないと同じ言葉を大声で繰り返す別の言い方に変える(「何時?」→「時計、何時?」)
大事な用件も口頭だけで済ませる日時や薬の飲み方は紙に書いて渡す

大きい声で話すのではなく、口をしっかり開いてハッキリ話すことを意識するだけで、すごく聞き取りやすくなりますよ。

テレビの音量が大きくて家族が困っている場合は、ミライスピーカーなどのテレビの音が聞き取りやすくなるスピーカーがあります。

ミライスピーカーについて詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。

ミライスピーカーについて↗

放っておくとどうなる?難聴と認知症の関係

「年だから仕方ない」と難聴をそのままにしておくのは、おすすめできません。難聴は、認知症の原因のうち予防や対策ができるものの中で、最も大きな要因の一つと言われています。

聞こえにくいと会話がおっくうになり、人と話す機会が減ります。すると脳への刺激が減り、孤立しやすくなってしまうんです。補充現象で「大きい声がつらい」状態だと、なおさら会話を避けがちになります。

補聴器は認知症予防になる?

2026年6月の欧州神経学会(EAN)では、てんかんと難聴がある成人のうち、補聴器を使う人は使わない人より認知症になるリスクが23%低い可能性があるという研究が発表されました。2億5,000万人を超える電子カルテのデータを分析したものです。

ただし、補聴器で認知症リスクを本当に下げられるかについては、まだ議論が続いています。「補聴器をつければ認知症にならない」とまでは言えませんが、会話を楽しめる状態を保つことは大切ですね。

補聴器の購入に使える助成制度

補聴器は決して安い買い物ではありません。ですが、自治体によっては購入費の助成を受けられます。

  • 身体障害者手帳(聴覚障害)がある場合:障害者総合支援法による補装具費の支給対象になる
  • 手帳がない軽度・中等度の難聴の場合:独自に助成している自治体が増えている

たとえば横浜市は、難聴が認知症のリスク因子の一つであることから、軽度・中等度難聴の人向けの補聴器購入費助成を2026年度も実施しています。

対象年齢や金額、申請方法は自治体ごとに違います。「お住まいの市区町村名+補聴器 助成」で検索するか、役所の高齢福祉の窓口や地域包括支援センターに相談してみてください。

補装具費の支給制度について詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。

補装具費の支給制度について↗

よくある質問

補聴器をつければ、大きい声で話しても大丈夫?

補聴器をつけているときに大声で話すと、さらにうるさく感じてしまいます。補聴器をつけているときこそ、普通の声でゆっくり話しましょう。

親が「聞こえてるから大丈夫」と受診を嫌がります。

難聴は少しずつ進むので、本人は気づきにくいものです。「耳が悪い」と責めずに、「健康診断のついでに」「テレビを楽しく見られるように」など、前向きな理由で誘ってみましょう。

補充現象があると、補聴器は使えないの?

使えます。大きな音を抑える調整ができる補聴器を選び、専門家にしっかり調整してもらうことがポイントです。

補充現象は若い人にも起こる?

起こります。大きな音を長時間聞き続けることによる騒音性難聴や、突発性難聴でも見られます。

まとめ

  • 耳が遠い人が大きい声を嫌がるのは、補充現象で「ちょうどいい音量」の幅が狭くなっているから
  • 大声にしても言葉は聞き取りやすくならず、うるささだけが増える
  • 正面から、ゆっくり、口元を見せて話すのが一番伝わる
  • 補充現象そのものは治せないが、きちんと調整した補聴器で付き合っていける
  • 難聴は認知症のリスクにもなるので、気になったら早めに耳鼻咽喉科へ

「聞こえないなら大きい声で」という思いやりが、実は相手を疲れさせていることもあります。今日から少しだけ話し方を変えて、親御さんとの会話をもっと楽にしてみてくださいね。

難聴についてもっと詳しく知りたいという人は難聴について詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。

難聴について↗

参考文献

医学書院「閾値上聴力検査/自記オージオメトリー」

日本聴覚医学会「聴覚心理検査 I 補充現象の検査 II 短音閾値検査」

「蝸電図からみた補充現象」

横浜市 補聴器購入費助成

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