「SLC26A4遺伝子に変異があります。」遺伝子検査の結果を見て、初めて聞く名前に戸惑った方も多いのではないでしょうか。
この記事でわかること
- SLC26A4遺伝子とは何か
- 前庭水管拡大症との関係
- なぜ新生児スクリーニングをパスすることがあるのか
- 難聴の症状や診断方法
- 補聴器や人工内耳などの対応方法
SLC26A4遺伝子は、先天性難聴の代表的な原因遺伝子の1つで、前庭水管拡大症やペンドレッド症候群と深い関係があります。また、新生児聴覚スクリーニングをパスしていても、あとから難聴が見つかることがあるのも大きな特徴です。
先天性難聴について詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。
この記事では、SLC26A4遺伝子の役割や症状、診断方法、治療・対応についてわかりやすく解説します。
SLC26A4遺伝子とは?

まずは、SLC26A4遺伝子がどのような働きをしているのかを見ていきましょう。
SLC26A4はペンドリンを作る遺伝子
SLC26A4は遺伝子の名前です。
遺伝子とは私たちの体を作っている設計図の役割をしています。
そんなSLC26A4遺伝子はペンドリンというタンパク質を作る設計図です。
ペンドリンは内耳や甲状腺でイオンを運ぶ役割をするタンパク質です。
先天性難聴の代表的な原因遺伝子
難聴に関係する遺伝子は100個ほどあると言われています。
SLC26A4遺伝子はそのなかのひとつで、OTOF遺伝子やGJB2遺伝子と並んで多い、難聴になる原因となる遺伝子です。
OTOF遺伝子とGJB2遺伝子もとても重要な遺伝子で、どちらも詳しく紹介した記事があります。ぜひご覧ください。
GJB2遺伝子について→
日本人でも比較的SLC26A4遺伝子が原因となる場合が多いです。
SLC26A4遺伝子の変異で起こる症状

SLC26A4遺伝子による難聴は、他の先天性難聴とは少し異なる特徴があります。進行性・変動性の難聴や、前庭水管拡大症、ペンドレッド症候群などが代表的です。
進行性・変動性の難聴
SLC26A4遺伝子変異が原因で起こる難聴の特徴として、進行性の難聴であることと変動性の難聴であることがあります。
まず進行性とはどういうことかというと、新生児のときには問題がなかったのに数年後に難聴が見つかり、症状が重いと3歳頃までに重度難聴になるケースもあります。
昨日まで聞こえていたのに、風邪などが原因で急に聴力が低下するということがあります。
また、変動性とはその日の体調などにより聴力が良くなったり悪くなったりします。
たとえば朝は聞こえていたのに夕方には聞こえにくい、風邪をひいた後に急に聴力が落ちたなど、日によって聞こえ方が変わることがあります。
他の難聴でも多少の変化はあるものの、違いは高くて数dB程度です。
SLC26A4の場合はもっと大きく変動するケースがあります。
前庭水管拡大症(EVA)
SLC26A4で起こる症状として前庭水管拡大症というものがあります。
前庭水管とは、内耳の中にある非常に細い骨の管で、内リンパ嚢とつながっています。
前庭水管拡大症は文字通り普通はとても細い管ですが、それが広く拡大してしまうというものです。
詳しくはまだ解明されていませんが、通常よりも広くなった前庭水管のせいでリンパ液の圧力が変化しやすくなり、有毛細胞に負荷がかかって感音性難聴を引き起こすと考えられています。
めまいや平衡感覚への影響
内耳には前庭というバランスを感じる部分があり、そこと脳をつないでいるため、SLC26A4ではめまいやふらつきを起こすことがあります。
ペンドレッド症候群
SLC26A4は前庭水管拡大症だけではなくペンドレッド症候群という甲状腺の異常が起こる病気にも関係があります。
こちらもペンドリンがうまく働かないことで、難聴や甲状腺の異常が起こります。
ペンドレッド症候群はSLC26A4起因の甲状腺異常単体のことを言うわけではなく、SLC26A4遺伝子異常で前庭水管拡大症かつ甲状腺異常の場合をペンドレッド症候群と呼びます。
非症候群性難聴(DFNB4)
ペンドレッド症候群はSLC26A4遺伝子異常+前庭水管拡大症+甲状腺異常の場合のことをいいます。
それに対して甲状腺異常がない、SLC26A4遺伝子異常+前庭水管拡大症のみの場合のことを非症候群性難聴(DFNB4)と呼びます。
同じSLC26A4遺伝子が原因でも症状によって診断名が変わるのは不思議ですね。
新生児聴覚スクリーニングとの関係

SLC26A4遺伝子による難聴で特に注意したいのが、新生児聴覚スクリーニングをパスすることがある点です。
スクリーニングをパスするケースもある
SLC26A4遺伝子異常による難聴で1番厄介なところとしては、なぜか新生児聴覚スクリーニングをパスしてしまう事があるという点です。
新生児聴覚スクリーニングでは引っかからなかったのに、数年後難聴がわかるということが起こります。
新生児聴覚スクリーニングについて詳しく紹介した記事もあるので、ぜひご覧ください。
なぜ後から難聴になるの?
これは気になるところですよね。
SLC26A4遺伝子に変異があっても、内耳の機能が完全にないわけではありません。
ただ、ペンドリンがうまく機能しないと徐々に内耳の環境が不安定になっていきます。
どういうことかというと、内耳のリンパ液でイオンを運ぶ役割をペンドリンが持っているのですが、SLC26A4に変異があるとペンドリンがうまく機能しません。
イオンを運ぶペンドリンの働きが十分じゃないと、内耳の環境を正常に保てなくなります。
イオンのバランスが崩れてしまうと耳がダメージを受けやすい状態になるので、時間が経ってから難聴になるということですね。
産まれたときは聞こえる→内耳に負荷がかかる→聴力低下
ということですね。
SLC26A4遺伝子はどのように診断される?

SLC26A4遺伝子による難聴は、聴力検査だけでなく、遺伝子検査や画像検査などを組み合わせて診断します。
遺伝子検査
遺伝子検査をすることでダイレクトにSLC26A4に変異があるかを調べることができます。
たとえば次のような場合に遺伝子検査を勧められる場合があります。
- 先天性難聴と診断された
- 前庭水管拡大症が見つかった
- 難聴の原因がわからない
遺伝子検査がどんな検査かについて紹介した記事もあります。こちらもぜひご覧ください。
CT・MRI検査
SLC26A4遺伝子異常が原因となる難聴では前庭水管拡大症が代表的な症状になります。
そのため、CTで前庭水管を確認することで原因を特定することができます。
また、内耳の骨の構造に異常がないかも確認します。
MRIでは内耳のリンパ液の状態を確認することで原因の特定が可能です。
甲状腺の検査
ペンドレッド症候群では甲状腺の異常が現れます。
そのため、甲状腺の検査が推奨されます。
ただ、幼少期では甲状腺異常が見られないケースもあります。
SLC26A4遺伝子による難聴の治療や対応

現在のところ、SLC26A4遺伝子そのものを治療する方法はありません。しかし、補聴器や人工内耳などによって聞こえをサポートすることは可能です。
補聴器
SLC26A4遺伝子による難聴でも他の難聴と同じように補聴器が有効な対策となります。
特に中度から高度難聴の重症度では補聴器により改善がみられるケースが多いです。
人工内耳
人工内耳も補聴器同様に有効です。
補聴器よりも重症度が高い場合に有効です。
定期的な聴力検査の重要性
SLC26A4遺伝子による難聴は進行性の難聴になるので、定期的な聴力検査をすることで今の状態を確認することが大切です。
補聴器などは今の聞こえの状態を把握して、最適化してこそ効果がでます。
SLC26A4遺伝子以外の難聴も定期的な検査は大事ですが、他の難聴よりもさらに重要度は高いです。
FAQ
SLC26A4遺伝子は遺伝しますか?
SLC26A4遺伝子も常染色体劣性遺伝なので、両親が難聴でなくても共に保因者の場合は25%の確率で発症します。
新生児スクリーニングをパスしても安心ですか?
新生児聴覚スクリーニングでは見過ごされるケースがあるため、Passしたら絶対大丈夫ということではありません。
他の要因で難聴になることもあるので、必ず子どもの様子は確認しましょう。
前庭水管拡大症は治りますか?
現在のところ残念ながら治療法はありません。
症状に応じた対応が必要になります。
人工内耳の適応になりますか?
難聴の度合いが重い場合は人工内耳の装用を検討した方がいいです。
SLC26A4遺伝子による難聴は予防できますか?
遺伝子の変異そのものを予防することはできません。ただし、定期的な聴力検査を行い、補聴器や人工内耳など適切な対応を早めに行うことで、聞こえによる影響を最小限にすることができます。
まとめ
- SLC26A4は先天性難聴の主要な原因遺伝子の1つ
- 前庭水管拡大症やペンドレッド症候群と深い関係がある
- 新生児スクリーニングをパスすることもある
- 定期的な経過観察が重要


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