あなたは補聴器がどういう仕組みになっているか知っていますか?
補聴器は外から入ってきた音を増幅して、聞き取りづらくなった音を強調することで聞き取りやすくするようになっています。
いわばマイクみたいなものですね。
補聴器については補聴器とは あなたにぴったりの聴こえを提供してくれる医療機器という記事で詳しく説明しているので参考にしてください。
もちろん、増幅するだけではなくイコライザーで特に聞き取りづらい音を増幅したり、周りの騒音を低減したりと聞き取りやすくするするための工夫があの小さい補聴器のなかにたくさん施されています。
しかし、補聴器では複数人での会話の聞き取りはあまり改善しない問題があります。
これは色々な人の話し声を同じように増幅してしまい、音の方向などによっての差別化が難しいためにおこります。
脳は話を聞きたい人の声をピックアップし、他の声は抑えるという能力を持っていますが、難聴の人はそれができづらくなっています。
そんな補聴器の問題を脳波を使って改善しようとする研究がコロンビア大学でされています。
まだまだ研究段階で課題は山積みのようですが、これが実現すれば、今多くの難聴者が悩んでいる問題が解決するかもしれません。
なぜ今の補聴器では聞き分けが難しいのか
現在の補聴器では会話の聞き分けが難しいとされています。
会話の聞き分けとは、複数人が同時に話しているような状況の場合、誰が何を話しているのかがわからないということです。
健聴の方でも2,3人ぐらいの会話だったら今誰がなにを話しているかはわかります。
これが10人とかが同時にあなたに話しかけたら誰が何を言ってるのか分かりませんよね?
きっとあなたは
“聖徳太子じゃないんで!”
と突っ込みを入れるぐらいしかできないと思います。
難聴の人は3,4人でこの状況になってしまいます。
音は耳で聞いていますが、何をいっているかは脳で解析しています。
健聴の人は10人とかが一斉に話しかけられると、脳が処理しきれずに会話がただの音に変わってしまいます。
難聴の人はそもそも、聴く能力が落ちてしまっているので、聴くことに注力してしまい、会話を理解するところが弱くなってしまいます。
おじいちゃんやおばあちゃんに話しかけて、ちょっと時間が経ってから返事があることとかないですか?
これは聞いてからなんと話しかけられたか理解するための時差があるからです。
このように複数人の会話は理解するのが非常に大変です。
補聴器を使うことによって聴くという部分は少し楽にすることができます。
しかし、それで聞き分けがうまくできるようになるかというとそんなことはありません。
それは補聴器がひとつのマイクで周りの音を集めて、同じように増幅しているからです。
例えばイヤホンとかで音楽を聞いているとき、ボーカルとギターとベースとドラムが別々で聴こえてきますか?
それぞれ意識しないと他の楽器の音が邪魔をして、聞きたい音だけをピックアップするのは難しいものです。
ボーッと音楽を聴いていたらボーカルでさえ何をいっていたかわからなくなることさえあります。
このように一緒くたに音がでてくるとなかなか聞き分けは難しくなってしまいます。
(音楽は定位という楽器の位置を左右に割り振って聴こえるように工夫がされていたりするので聞き分けはしやすかったりします)
このような理由から難聴の人は複数人での会話がとっても苦手です。
正直、これだけ理解してもらえるだけでも私はこの記事を読んでいただいた方にありがとうとお伝えしたいです。
脳波聞きたい音だけを取捨選択できる
皆さんは“カクテルパーティー効果”という言葉を聞いたことはありますか?
聞きたい音だけを抽出して聞き取ることができるのを、このカクテルパーティー効果と呼びます。
パーティーなどで周りが騒がしい中でも、話を聞きたい相手の話し声はよく聴こえるということからこの名前がついています。
これは脳が聞き取りたい人の声は大きく、それ以外の音は小さくすることができるということを示しており、これによって私たちは情報の取捨選択を容易にすることができるようになっています。
補聴器に取り入れられようとしている技術がこのカクテルパーティー効果をもたらしている脳波の信号となります。
私たちは耳で音を聞いているのではなく、脳で音を聴いているというのがよくわかりますね。
聞き分けができるようになる効果
では、補聴器にこのカクテルパーティー効果の技術が組み込まれることでどんな効果期待できるのでしょうか。
私は次の3点が大きなポイントだと思います。
- 難聴者の企業での活躍の場の拡大
- 認知症の予防
- 発達障害や情報処理障害の子供の支援
1つめとして難聴者の企業での活躍の場の拡大が挙げられます。
この技術により難聴の人が苦手としていた複数人での会話が容易になります。
これにより、企業では難聴者が苦手としている会議の参加ができるようになりますね。
2つめとして認知症の予防があります。
高齢者でこの複数人での会話が苦手なためにお友だちとランチに出掛けていたのが引きこもりがちになってしまったり、家族の会話に入ってこなくなってしまうことがあります。
このような高齢者は部屋に籠りがちになってしまい、会話をしないことから認知症になりやすくなってしまいます。
この技術が実用化されることにより、認知症の予防も期待できるようになります。
3つめは発達障害や情報処理障害の子供の支援です。
私はこの技術が発達障害や情報処理障害の子供にも効果があるのではとおもっています。
そのような子達は入ってくる音の情報で何が重要なのかが判断しづらくなってしまっています。
先生の話している声と、周りの雑音が同じく気になるんですね。
なので先生が話をしているときに、近くで音がなるとそちらに気をとられてしまう。
音の取捨選択をしやすい状況をつくってあげることによって、これらを改善することも可能ではないでしょうか。
まとめ
人が聞きたい情報を取捨選択する脳波を補聴器に活用しようというこの技術ですが、まだまだ実用段階ではないのでもう少し実装されるのには時間がかかるでしょう。
しかし、この技術が補聴器に応用されることによって、より自然な聞こえを実現することができると思います。
それにより難聴者が職場で更に活躍できるようになり、高齢者は認知症の予防にもつながると私は思います。
早くこのような技術が実用化されてほしいですね。
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