難聴というと、両耳とも聞こえにくくなるイメージがありますよね。でも実は、片耳だけ聞こえにくい、もしくは聞こえない「一側性難聴(片耳難聴)」という難聴もあります。
「もう片方の耳が聞こえるなら困らないんじゃない?」と思われがちですが、当事者にとっては意外と不便が多いんです。
この記事では、一側性難聴の原因や症状、治療法に加えて、補聴器や人工内耳など聞こえを補う方法の最新情報、毎日の生活でできる工夫まで紹介します。
片耳の聞こえに悩んでいる方はもちろん、家族や友人、職場の人が片耳難聴という方もぜひ参考にしてください。
難聴全体については“難聴とは?症状・原因・種類・治療法をわかりやすく解説”で紹介しています。
一側性難聴(片耳難聴)とは
一側性難聴は、文字通り片方の耳だけが聞こえにくい、もしくは聞こえない状態のことです。もう片方の耳は普通に聞こえています。
耳は左右に2つありますよね。そのため「片方が聞こえなくても、もう片方があるじゃない」と思う人も多いと思います。
では、目や手や足も2つあります。片方が使えなくなったときに「もう片方があるじゃない」と言われたら、いやいや不便だよ!って思いませんか?耳も同じで、片方が聞こえにくいだけで日常生活のいろんな場面で困ることがあるんです。
一側性難聴・片耳難聴・一側聾の違い
呼び方がいくつかあるので、ここで整理しておきます。
- 一側性難聴:医学的な呼び方。軽い難聴から全く聞こえない状態まで含みます
- 片耳難聴:一般的にわかりやすい呼び方。意味は一側性難聴とほぼ同じです
- 一側聾(いっそくろう)・片側聾:片耳が全く、またはほとんど聞こえない状態。英語ではSSD(Single-Sided Deafness)と呼ばれます
この記事では、主に「一側性難聴(片耳難聴)」と書いていきます。
一側性難聴の人はどれくらいいる?
一側性難聴は、実はそれほど珍しいものではありません。
島根県の案内によると、新生児聴覚スクリーニング検査などをきっかけに一側性難聴と診断される子どもは、軽い難聴も含めると200〜300人に1人ほどといわれています。また、片耳難聴の情報サイト「きこいろ」では、日本に36万人以上の片耳難聴の人がいると推定しています。
見た目ではわからないので気づかれにくいだけで、身近にも意外と多い難聴なんですね。
片耳難聴で起こりやすい困りごと

私たちは普段、左右の耳を一緒に使うことで、いろいろな「聞く力」を発揮しています。片耳が聞こえにくくなると、この両耳で聞く働きがうまく使えなくなります。具体的には、次のような困りごとが起こりやすくなります。
- 音の方向がわかりにくい
- 騒がしい場所で会話が聞き取りにくい
- 聞こえにくい側から話しかけられると気づきにくい
- 周りの人に困りごとが伝わりにくい
音の方向がわかりにくい
耳は、左右の耳に音が届く時間や大きさのわずかな差から、音がどこから来ているのかを判断しています。そのため片耳が聞こえにくいと、音の方向がつかみにくくなります。
- どこから呼ばれたのかわからず、キョロキョロしてしまう
- 物を落としたとき、どこに落ちたのかわかりにくい
- 何人かで話していると、誰が話しているのかわかりにくい
といったことが起こりやすくなります。
騒がしい場所で会話が聞き取りにくい
静かな場所での1対1の会話なら、ほとんど困らない人も多いです。でも、居酒屋やカフェ、駅のホームなどのにぎやかな場所になると、一気に聞き取りにくくなることがあります。
両耳で聞いていると周りの雑音の中から話し声を拾いやすいのですが、片耳だとそれが難しくなるためです。
聞こえにくい側から話しかけられると気づきにくい
わりと当たり前のことですが、聞こえにくい側から話しかけられると、声が頭にさえぎられて届きにくくなります。
特に困るのが電話のときですね。聞こえる方の耳を電話に使っているので、周りの音や話しかけられた声にほとんど気づけません。
周りに困りごとが伝わりにくい
片耳難聴は見た目ではわかりませんし、静かな場所では普通に会話できることも多いです。そのため「さっきは聞こえてたのに」「無視された」と誤解されてしまうこともあります。聞こえる場面と聞こえにくい場面があるのが、片耳難聴の伝わりにくいところなんです。
また、聞き取ろうと集中し続けることで、人より疲れやすいと感じる人もいます。
一側性難聴の主な原因
一側性難聴には、内耳や神経に原因がある「感音性難聴」のケースもあれば、外耳や中耳に原因がある「伝音性難聴」のケースもあります。どちらになるかは原因によって変わるので、「一側性難聴だから必ずこう」という決まった症状はない、と覚えておきましょう。
難聴の種類について詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。
大人に多い原因
- 突発性難聴:ある日突然、片耳が聞こえにくくなる病気。はっきりした原因はわかっていませんが、ストレスや疲れ、睡眠不足などが関係するともいわれています
- メニエール病:めまい・耳鳴り・耳が詰まった感じと一緒に、聞こえにくさをくり返す病気
- ムンプス難聴:おたふく風邪のあとに起こる難聴。片耳に起こることが多いです
- 慢性中耳炎などの耳の病気:伝音性難聴の原因になりやすいです
- そのほか:頭のケガや、まれに聴神経の腫瘍などが原因になることもあります
突発性難聴、メニエール病は感音性難聴、慢性中耳炎は伝音性難聴になる傾向があります。
突発性難聴については”突発性難聴になってしまったら 聴力を戻すためにすること“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
メニエール病については”メニエール病とは 耳鳴りやめまい、難聴を引き起こす病気“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
ムンプス難聴については”ムンプス難聴とは?おたふくかぜによる難聴の症状・治療・後遺症をわかりやすく解説“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
慢性中耳炎については”【パパママ向け】子どもの中耳炎とは?見逃しやすいサインと受診の目安をやさしく解説“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
子どもに多い原因
子どもの一側性難聴では、次のような原因が挙げられます。
- 生まれつき聞こえの神経(蝸牛神経)が細い、内耳の形が違うなど
- 先天性サイトメガロウイルス感染症
- ムンプス(おたふく風邪)
ただし、調べても原因がはっきりしないケースも半分以上あるといわれています。原因がわからなくても、聞こえに合わせたサポートはできるので安心してくださいね。ムンプス難聴はワクチンで予防できる難聴なので、気になる方はかかりつけの小児科で相談してみましょう。
先天性難聴について”先天性難聴とは?原因·症状·新生児スクリーニングから治療までわかりやすく解説“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
急に片耳が聞こえにくくなったら
「朝起きたら片耳がこもった感じがする」「急に片耳だけ聞こえにくい」。そんなときは、できるだけ早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
突発性難聴などは、早い段階で治療を始めた方が聴力が回復しやすいと考えられています。「そのうち治るかな」と様子を見たくなる気持ちもわかりますが、耳の違和感が続くときは、気軽に相談してみてください。
何もなければそれで安心できますしね。次のような症状があるときも、受診の目安になります。
- 耳が詰まった感じ・こもった感じが続く
- 耳鳴りが急に出てきた
- めまいがある
- 電話の声が片耳だけ聞き取りにくい
検査と診断の流れ

耳鼻咽喉科では、主に次のような検査で聞こえの状態や原因を調べます。
- 問診:いつから、どんなふうに聞こえにくいか、めまいや耳鳴りはあるかなど
- 耳の中の診察:耳あかや中耳炎など、外耳・中耳に原因がないかを確認
- 純音聴力検査:「ピー」という音が聞こえたらボタンを押す、おなじみの検査
- 語音聴力検査:言葉がどれくらい聞き取れるかを調べる検査
- ティンパノメトリー:鼓膜の動きから中耳の状態を調べる検査
- 必要に応じてMRI・CTなど:内耳や神経の状態を詳しく調べます
赤ちゃんの場合は、新生児聴覚スクリーニングや、寝ている間に脳の反応を見る検査(ABRなど)で聞こえを調べます。
検査の内容についてはそれぞれ詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。
“聴力検査の種類一覧|純音聴力検査・ABR・OAEの違いとは?“
“ティンパノメトリーとは?検査方法とA・B・C型の見方をわかりやすく解説“
“新生児聴覚スクリーニングとは?refer(リファー)と言われたときに知っておきたいこと“
治療と聞こえを補う方法
一側性難聴の対策は、大きく分けて「原因になっている病気の治療」と「聞こえを補う機器の利用」の2つです。
原因になっている病気の治療
突発性難聴なら薬での治療、中耳炎なら耳の治療や手術など、まずは原因に合わせた治療を行います。治療で聴力が戻ることもありますが、残念ながら元通りにならないケースもあります。
その場合でも、補聴器などで聞こえを補うことができます。
補聴器

聞こえにくい方の耳に、ある程度聴力が残っている場合は、普通の補聴器が役立つことがあります。
聞こえにくい側の音を拾えるようになるので、音の方向がわかりやすくなったり、雑音の中でも聞き取りやすくなったりする可能性があります。
補聴器については”補聴器とは?初心者向けに種類や値段、選び方を完全ガイド“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
CROS(クロス)補聴器
聞こえにくい方の耳がほとんど聞こえない場合に使われるのが、CROS補聴器です。
聞こえにくい側の耳にマイクをつけて、拾った音を聞こえる側の耳に送る仕組みです。聞こえない側から話しかけられても、聞こえる耳で声を拾えるようになります。ただし、音を反対の耳に送っているので、音の方向がわかるようになるわけではありません。
骨導補聴器・軟骨伝導補聴器
生まれつき耳の穴がふさがっている場合など、伝音性難聴で普通の補聴器が使いにくい人向けの補聴器です。
骨の振動で音を伝える「骨導補聴器」や、耳の軟骨を振動させて音を伝える日本生まれの「軟骨伝導補聴器」などがあります。
骨導補聴器について”骨導型補聴器とは?仕組み・価格・メリット・デメリットや向いている人を解説“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
人工内耳
人工内耳は、手術で内耳に電極を入れて、聞こえの神経を直接刺激する医療機器です。
これまで日本では両耳とも高度な難聴の人が対象でしたが、2024年に日本耳科学会が「一側性高度難聴に対する人工内耳適応基準」を出しました。
対象は、言葉を覚えたあとに片耳が高度〜重度の難聴になり、発症から6か月以上たっても他の治療で改善が見込めない人などです。
片耳への人工内耳では、雑音の中での聞き取りや、音の方向感がよくなる例が報告されています。ただし、2024年の基準ができた時点では、片耳への人工内耳は健康保険の対象外でした。厚生労働省では、先進医療としての取り扱いが審議されています。
人工内耳については”人工内耳とは?対象者や手術費用、聞こえ方までわかりやすく解説“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
| 方法 | 向いている人 | 特徴 |
| 補聴器 | 聞こえにくい耳に、ある程度の聴力が残っている人 | 聞こえにくい側の音を拾える。方向感の改善も期待できる |
| CROS補聴器 | 聞こえにくい耳がほとんど聞こえない人 | 聞こえない側の音を聞こえる耳に送る。方向感は改善しにくい |
| 骨導・軟骨伝導補聴器 | 耳の穴がふさがっているなど、伝音性難聴がある人 | 通常の気導補聴器が使いにくい人でも使用できる場合がある |
| 人工内耳 | 片耳に高度〜重度の感音性難聴があり、適応基準を満たす人 | 手術が必要。雑音下での聞き取りや方向感の改善が期待できる |
どの方法が合うかは、聴力や生活スタイルによって人それぞれです。補聴器を試してみても効果の感じ方には個人差があるので、医師や認定補聴器技能者と相談しながら、無理のない目標で選んでいきましょう。
子どもの一側性難聴

以前は、子どもの片耳難聴は就学時健診などで見つかることが多かったのですが、最近は新生児聴覚スクリーニングで早くわかるケースも増えています。
片耳がしっかり聞こえていれば、言葉は普段の関わりの中で自然に覚えていくことがほとんどです。なので、診断されたからといって必要以上に心配しなくて大丈夫です。
ただ、騒がしい場所や聞こえにくい側からの声は聞き取りにくいので、周りの大人がちょっと配慮してあげると過ごしやすくなります。
学校や園で配慮してもらいたいこと
- 聞こえる耳が先生側になるように座席を決める
- 先生の近くの席にする
- 大事な連絡は、正面から目を見て伝える
- 騒がしいときは、板書やプリントでも伝える
先生に「聞こえる側・聞こえにくい側」を伝えておくだけでも、ずいぶん違います。必要に応じて、先生の声を直接届ける補聴援助システムを使うこともあります。
補聴器の購入助成
片耳難聴は身体障害者手帳の対象外ですが、自治体によっては子どもの補聴器購入費の助成を受けられることがあります。
ただし、助成の対象を「両耳とも一定以上の難聴」としている自治体もあり、片耳難聴が対象になるかは地域によって違います。お住まいの市区町村の窓口で確認してみましょう。
補装具費の補助金については”障害者総合支援法の補聴器補助とは?補装具費支給制度の対象者・自己負担額・申請方法を初心者向けに解説“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
日常生活でできる工夫

機器を使わなくても、ちょっとした工夫でぐっと過ごしやすくなります。
自分でできること
- 座る位置を工夫する:会議や食事では、話す相手が聞こえる耳側に来るように座る
- お店は静かな席を選ぶ:壁際や角の席を選ぶと、雑音が入りにくくなります
- 電話は落ち着いた場所でかける:通話中は周りの音や声に気づきにくいので、静かな場所を選びましょう
- 字幕や文字起こしアプリを活用する:会議やオンライン通話では、字幕機能がかなり便利です
最近は文字起こしアプリや文字起こしをしてくれるイヤホンもあるので、活用できるといいですね。
“Nottaとは?AI文字起こしの使い方・料金・評判を解説|難聴者にもおすすめ“
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周りの人に伝えておくこと
「右耳が聞こえにくいので、左側から話してもらえると助かります」と、具体的に伝えるのがおすすめです。片耳難聴は見た目でわからない分、伝えてもらえると周りも配慮しやすくなります。
周りの人ができること
家族や友人、職場の人が片耳難聴の場合は、次のことを意識してもらえるとうれしいです。
- 聞こえる耳側から話しかける
- 呼びかけるときは、正面に回る・軽く肩をたたくなど気づいてもらいやすくする
- 騒がしい場所では、少し静かなところで話す
大きな声で話す必要はありません。話し方のコツは”大きい声を出す必要なし 簡単に耳が遠い人も聞きやすくなる話し方“で紹介しているので、ぜひご覧ください。
障害者手帳・支援制度

今の日本の基準では、片耳だけが聞こえにくい、または聞こえない状態では、聴覚障害の身体障害者手帳の対象になりません。片耳が聞こえにくいだけでも生活の中で困ることは多いので、もどかしく感じる方もいると思います。一方で、2024年4月からは、障害者差別解消法の改正により、事業者による「合理的配慮」の提供が義務になりました。職場や学校、お店などで「聞こえる側から話してほしい」「大事なことは文字でも伝えてほしい」といった配慮をお願いしやすくなっています。
難聴と障害者手帳については“難聴で身体障害者手帳は取得できる?認定基準・聴力レベル・申請方法を初心者向けに解説”で詳しく説明しています。
よくある質問
一側性難聴は治りますか?
原因によります。突発性難聴などは、早めに治療することで聴力が回復することもあります。治療で元通りにならない場合でも、補聴器などで聞こえを補う方法があります。
聞こえる方の耳も悪くなりますか?
片耳難聴だからといって、もう片方の耳も必ず悪くなるわけではありません。ただ、聞こえる耳は大切な耳なので、大きな音を長時間聞かない、定期的に聴力をチェックするなど、いたわってあげましょう。
イヤホンで音楽を聴くときのコツは?
片耳で聴くと、ステレオの曲は左右どちらかの音が聞こえなくなってしまいます。スマホの設定で「モノラルオーディオ」をオンにすると、左右の音がまとまって片耳でも曲全体を楽しめますよ。音量の上げすぎには気をつけてくださいね。
子どもが片耳難聴と診断されました。何をすればいいですか?
まずは、定期的に耳鼻咽喉科で聞こえをチェックしてもらいましょう。そのうえで、園や学校の先生に聞こえにくい側を伝えて、座席などを配慮してもらうのがおすすめです。
まとめ
一側性難聴(片耳難聴)は、片方の耳だけが聞こえにくい、または聞こえない難聴です。
- 音の方向がわかりにくい、騒がしい場所で聞き取りにくいなどの困りごとがある
- 原因は突発性難聴やムンプス難聴などさまざまで、原因がわからないことも多い
- 急に聞こえにくくなったら、早めに耳鼻咽喉科へ
- 補聴器やCROS補聴器、条件によっては人工内耳など、聞こえを補う方法は増えている
- 座る位置や周りへの伝え方など、ちょっとした工夫で過ごしやすくなる
- 片耳難聴は見た目でわからない分、一人で抱え込みがちです。困っていることを周りに伝えたり、専門家に相談したりしながら、自分に合った方法を見つけていきましょう。



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