私が子どものころ、親から「おたふくかぜは早めにかかったほうがいい」とよく言われていました。
同じように言われて育ったパパママも多いのではないでしょうか。でも実は、おたふくかぜには「ムンプス難聴」という合併症があります。
数百〜千人に1人ほどの割合で起こり、多くは片方の耳の聞こえが大きく下がってしまいます。
うれしいことに、ムンプス難聴はワクチンで予防できます。しかも2026年には、日本でもおたふくかぜワクチンの定期接種化に向けた議論が大きく前に進みました。
この記事では、はじめて子育てをするパパママに向けて、ムンプス難聴の基本から予防法をやさしくまとめました。
この記事でわかること
- ムンプス難聴がどんな病気で、どのくらいの確率で起こるのか
- 子どもの片耳の難聴に気づくためのポイント
- おたふくかぜワクチンの時期・費用・副反応
- 定期接種化やMMRワクチンなど2026年の最新の動き
ムンプス難聴とは?

ムンプス難聴とは、おたふくかぜ(ムンプス)のウイルスが耳の奥にある「内耳」を傷つけることで起こる難聴です。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の基本
おたふくかぜは、ムンプスウイルスに感染して起こる病気です。正式には「流行性耳下腺炎」といいます。
- 咳やくしゃみのしぶき、手についたウイルスなどからうつる
- 耳の下(耳下腺)が腫れて痛むのが代表的な症状
- 熱が出ることも多い
- 感染しても症状がはっきり出ない人もいる
多くは1〜2週間ほどで自然に治ります。ちなみに私はワクチンを接種していたにも関わらず小学校高学年でおたふく風邪になって、めちゃめちゃしんどかった記憶があります。
おたふく風邪はまれに合併症が起こることがあり、そのひとつがムンプス難聴です。
どのくらいの確率で起こる?
ムンプス難聴は、おたふくかぜにかかった人の数百〜千人に1人ほどで起こるといわれています。
日本の健康保険のデータを使った研究では、おたふくかぜの患者さん約6万8千人のうち102人がムンプス難聴になっていました。だいたい668人に1人の割合です。
また日本耳鼻咽喉科学会の全国調査では、2015〜2016年の2年間で少なくとも348人がムンプス難聴になったと報告されています。「数百人に1人」と聞くと少なく感じるかもしれません。
でも、おたふくかぜは数年ごとに大きな流行をくり返す病気です。流行の年には、それだけ多くの子どもがムンプス難聴になる可能性があるということですね。
ムンプス難聴の特徴
ほとんどが片耳で、聞こえの低下は大きいことが多い
ムンプス難聴の多くは、片方の耳だけに起こります。
先ほどの全国調査では、最終的に片耳の難聴だった人が95.5%、両耳の難聴だった人が4.5%でした。また、約8割の人に「高度」以上の難聴が残っていました。
これは、すぐそばで話しかけられても聞き取るのが難しいくらいの聞こえです。
片耳が聞こえにくくなると、次のようなことが起こりやすくなります。
- 音がどこから聞こえてくるのかわかりにくい
- にぎやかな場所で会話を聞き取りにくい
- 聞こえにくい側から話しかけられても気づきにくい
片方の耳が聞こえにくい状態は「一側性難聴」とも呼ばれます。くわしくは”一側性難聴(片耳難聴)とは?原因・症状・治療と聞こえを補う方法【2026年最新】“も読んでみてください。
めまいや耳鳴りをともなうこともある
ムンプス難聴では、聞こえの低下と一緒にめまいや耳鳴りが出ることもあります。全国調査では、めまいが約4割、耳鳴りも約4割の人にみられました。
両耳に起こることもある
数は多くありませんが、両耳に起こるケースもあります。両耳の場合は日常生活への影響が大きく、補聴器や人工内耳が必要になることもあります。
子どもの片耳の難聴は気づきにくい
片耳の難聴は、反対側の耳で聞こえているため、まわりの大人も本人もなかなか気づけないことがあります。
小さな子どもだと「聞こえにくい」と言葉で伝えるのも難しいですよね。おたふくかぜにかかった後は、次のようなサインがないか少し気にかけてあげてください。
- 片側から呼んだときだけ反応が遅い、振り向かない
- 電話やおもちゃの音を、いつも同じ側の耳に当てて聞いている
- テレビの音を大きくしたがる、近づいて見る
- ふらつく、めまいを訴える
- 「耳がへん」「ジーって音がする」などと言う
なお、ムンプス難聴は耳の下の腫れがはっきりしないまま起こることもあるといわれています。
受診の目安
上のようなサインに気づいたら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
おたふくかぜの後でなくても、気になる様子があれば相談して大丈夫です。受診のときは、おたふくかぜにかかった時期や、いつから様子が変わったかを伝えるとスムーズです。
治療と回復の見込み

残念ながら、ムンプス難聴にはまだ確立した治療法がありません。病院では、急に聞こえが悪くなる病気(突発性難聴など)と同じように、ステロイドなどの薬で治療が試みられることがあります。
ただ、ムンプス難聴は内耳の細胞が傷ついてしまうため、聞こえが元に戻るのは難しいことが多いとされています。
だからこそ「かかってから治す」よりも「かからないように防ぐ」ことが大切になります。
内耳の細胞については”有毛細胞とは?なぜ壊れると耳が聞こえなくなるのか|難聴との関係をわかりやすく解説“という記事でくわしく紹介しています。
片耳が聞こえにくくなったら:生活と学校でのサポート

片耳が聞こえにくくなっても、ちょっとした工夫で過ごしやすさはぐっと変わります。
- 話しかける位置:聞こえる側から話しかける。家族で共有しておくと安心
- 学校・園への共有:聞こえる側が先生に近くなるよう、席の位置を相談する
- にぎやかな場所:大事な話は静かな場所で、顔を見ながら伝える
- 安全面:道路では聞こえにくい側から来る車や自転車に気づきにくいので、一緒に確認する習慣をつける
聞こえを補う機器としては、聞こえない側の音を反対側の耳に届ける「クロス補聴器」などもあります。どんな方法が合うかは、耳鼻咽喉科の先生と相談しながら決めていきましょう。補聴器や人工内耳については、”補聴器とは?初心者向けに種類や値段、選び方を完全ガイド“や”人工内耳とは?対象者や手術費用、聞こえ方までわかりやすく解説“の記事も参考にしてください。
予防はワクチンが基本

ムンプス難聴を防ぐいちばん確実な方法は、おたふくかぜワクチンで、おたふくかぜそのものにかからないようにすることです。
接種の時期と回数
おたふくかぜワクチンは、2回接種がすすめられています。
| 時期の目安 | |
| 1回目 | 1歳になったらすぐ |
| 2回目 | 小学校に入る前の1年間(年長さんの年) |
ちょうどMR(麻しん風しん)ワクチンの定期接種と同じタイミングなので、一緒に受けるとスケジュールを組みやすいですよ。ほかのワクチンとの同時接種もできます。
費用と自治体の助成
2026年時点では、おたふくかぜワクチンはまだ「任意接種」です。費用は自己負担で、1回あたり5,000円前後が目安ですが、医療機関によって変わります。
自治体によっては費用の一部を助成しているところもあります。お住まいの市区町村のホームページで「おたふくかぜ 予防接種 助成」と調べてみてください。
副反応について
ワクチンは弱めたウイルスを使った「生ワクチン」です。そのため、接種後しばらくして耳の下が軽く腫れたり、熱が出たりすることがあります。まれな副反応として無菌性髄膜炎があります。
国内の大規模な調査では、10万回の接種あたり約9〜13例でした。これに対して、自然におたふくかぜにかかった場合は、無菌性髄膜炎が1〜10%ほどで起こるとされています。ワクチンのほうがずっと少ないことがわかりますね。
なお、ワクチンを打っていてもおたふくかぜにかかることはありますが、かかったとしても軽く済むことが多いといわれています。
おたふくかぜワクチンの定期接種化とMMRワクチン
2026年は、おたふくかぜワクチンにとって大きな動きがあった年です。
MMRワクチン「ミムリット」が承認された
2026年5月11日、はしか(麻しん)・おたふくかぜ・風しんの3つを1本で予防できるMMRワクチン「ミムリット皮下注用」が国に承認されました。
日本でもかつてMMRワクチンが使われていましたが、副反応の問題で1993年に中止されています。
今回のワクチンは海外で広く使われているおたふくかぜのウイルス株を使っており、国内の臨床試験では接種後の無菌性髄膜炎はみられませんでした。
発売時期や接種できる医療機関、費用については、かかりつけの小児科で確認してください。
定期接種になるのはいつから?
2026年9月30日、国の専門家の小委員会が、おたふくかぜワクチンを定期接種で使うことについて「大きな懸念はない」とまとめました。
これまでの単独のおたふくかぜワクチンと、新しいMMRワクチンのどちらも対象です。定期接種になった場合の案として、次の内容が示されています。
- 1回目(第1期):1歳のとき
- 2回目(第2期):小学校に入る前の1年間
- キャッチアップ接種:1歳での接種機会を逃し、まだ一度も打っていない就学前の子ども
ただし、定期接種にするかどうかの最終決定は、2026年10月時点ではまだです。2027年度からの開始を目指して議論が進んでいると報じられていますが、正式な開始時期は今後の国の発表を待つ必要があります。
今、どうすればいい?
「定期接種になるまで待ったほうがいい?」と迷うパパママもいると思います。おたふくかぜは数年おきに流行をくり返していて、次の流行がいつ来るかはわかりません。
1歳を過ぎていて未接種なら、待たずに今のワクチンで接種しておくのがおすすめです。
迷ったら、かかりつけの小児科に相談してみてくださいね。最新の情報は、厚生労働省やお住まいの自治体のホームページで確認できます。
パパママ自身の接種歴もチェックしよう
ムンプス難聴は子どもだけの病気ではありません。全国調査では、子どもに次いで子育て世代の大人にも多くみられました。子どもからうつるケースも考えられます。
- 母子手帳で、自分がおたふくかぜにかかったか、ワクチンを打ったかを確認する
- 記録がなく、かかったかどうかもはっきりしない場合は、医療機関で相談する(血液検査で抗体を調べることもできます)
- 大人も任意でワクチンを受けられる
ただし、おたふくかぜワクチンは生ワクチンなので、妊娠中は接種できません。接種後もしばらくは妊娠を避けるよう案内されます。妊娠を考えている人は、早めに医師に相談しておくと安心です。
よくある質問
おたふくかぜに一度かかれば、もう大丈夫ですか?
一度かかると多くの場合は免疫がつきますが、「かかったと思っていたら別の病気だった」ということもあります。記録がはっきりしない場合は、かかりつけ医に相談してみてください。
ワクチンを打てばムンプス難聴にはなりませんか?
ワクチンを打っても100%防げるわけではありません。それでも、おたふくかぜにかかるリスクを大きく下げられるので、結果としてムンプス難聴の予防につながります。
ほかのワクチンと同時に打てますか?
はい、MRワクチンや水ぼうそうのワクチンなどと同時に接種できます。同時接種で効果が弱まったり、副反応が増えたりするという知見はないとされています。
定期接種になるまで待ってもいいですか?
開始時期はまだ決まっていません。その間におたふくかぜが流行する可能性もあるので、対象年齢になっていれば待たずに接種を検討するのがおすすめです。
ムンプス難聴は治りますか?
確立した治療法はなく、聞こえが元に戻るのは難しいことが多いとされています。だからこそ予防が大切です。
まとめ
- ムンプス難聴は、おたふくかぜにかかった人の数百〜千人に1人ほどで起こる合併症
- 多くは片耳で、聞こえの低下が大きく、元に戻るのは難しいことが多い
- 片耳の難聴は気づきにくいので、おたふくかぜの後は様子を見守る
- おたふくかぜワクチンで予防できる。1歳と就学前の2回がおすすめ
- 2026年はMMRワクチンが承認され、定期接種化に向けた議論も前進中
「早めにかかったほうがいい」と言われていたおたふくかぜですが、今はワクチンで防げる時代です。子どもの聞こえを守るために、まずは母子手帳で接種歴を確認するところから始めてみてくださいね。
難聴についてもっと詳しく知りたい人は”難聴とは?症状・原因・種類・治療法をわかりやすく解説【セルフチェック付き】“もぜひご覧ください。



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