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薬剤性難聴とは?原因になる薬一覧・症状・治る可能性をわかりやすく解説

難聴
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「薬を飲み始めてから、なんだか耳鳴りがする」「家族の聞き返しが増えた気がする」。そんなとき、実は薬の副作用が関係していることがあります。

薬が原因で起こる難聴は薬剤性難聴(薬物性難聴)と呼ばれます。とはいえ、原因になりうる薬を使った人がみんな難聴になるわけではありません。

多くの薬は、医師が聞こえへの影響も考えたうえで処方しています。

この記事では、薬剤性難聴の原因になりうる薬、気づくためのサイン、治る可能性、予防の方法までをまとめました。

大切なのは「知っておいて、早めに気づくこと」です。気になる症状があっても自己判断で薬をやめず、まずは医師や薬剤師に相談してくださいね。

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薬剤性難聴(薬物性難聴)とは

薬剤性難聴とは、病気の治療のために使った薬の副作用で、聞こえが悪くなる状態のことです。医療機関では「薬剤性難聴」「薬剤性内耳障害」と呼ばれることが多く、「薬物性難聴」も同じ意味で使われます。

耳のどこに影響が出るの?

主に影響を受けるのは、耳の奥にある内耳です。内耳の蝸牛(かぎゅう)には、音の振動を電気信号に変える「有毛細胞」が並んでいます。薬の影響でこの細胞がダメージを受けると、音をうまく脳に届けられなくなり、感音難聴が起こります。

有毛細胞について”有毛細胞とは?なぜ壊れると耳が聞こえなくなるのか|難聴との関係をわかりやすく解説“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。

有毛細胞について↗

内耳には体のバランスを保つ「前庭」もあるため、薬によってはめまいやふらつきが一緒に出ることもあります。

どれくらい起こるもの?

起こる頻度は薬の種類や量、使う期間によって大きく変わります。

たとえば抗がん剤のシスプラチンの添付文書では、聴力低下・難聴が2.8%、耳鳴が3.3%と報告されています。つまり「使ったら必ずなる」ものではありません。

一方で、量が増えるほど起こりやすくなる薬もあるため、治療中は聞こえの変化に気を配ることが大切です。

薬剤性難聴の症状と気づくきっかけ

薬剤性難聴は、両耳に同時に起こることが多いのが特徴です。ゆっくり進むことが多いので、本人より先に家族が気づくケースも少なくありません。

耳鳴り・耳がつまった感じが先に出やすい

「キーン」「ピー」といった高い音の耳鳴りや、耳がつまったような感じ(耳閉感)が最初のサインになることがあります。

電子音が聞こえにくくなる

アミノグリコシド系抗菌薬や白金製剤では、高い音から聞こえにくくなる傾向があります。会話より先に、体温計のアラームや電子レンジの「ピッ」という音が聞き取りにくくなることがあります。

一方、ループ利尿薬やサリチル酸剤では、低い音から高い音まで全体的に聞こえにくくなるのが一般的です。

家族や周りが気づくサイン

  • 聞き返しが増えた
  • テレビの音量が大きくなった
  • 声をかけても振り向かないことがある

めまい・ふらつきを伴うことも

一部の薬(特にストレプトマイシンなどのアミノグリコシド系)では、平衡感覚に影響が出て、めまいやふらつきを感じることがあります。

薬剤性難聴の原因になりうる薬一覧

代表的なのは、次の4つのグループです。どれも治療に欠かせない大切な薬なので、名前があるからといって心配しすぎる必要はありません。

薬のグループ主な薬(一般名)主な用途聞こえ方の特徴
アミノグリコシド系抗菌薬ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、アルベカシンなど結核、重い細菌感染症高い音から聞こえにくくなる。めまいを伴うこともある
白金製剤(抗がん剤)シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチンなど各種がんの治療高い音から少しずつ聞こえにくくなることが多い
ループ利尿薬フロセミド、トラセミド、アゾセミド、ブメタニドなど心不全やむくみの治療全体的に聞こえにくくなることがある
サリチル酸剤アスピリンなど解熱・鎮痛、血液をさらさらにする全体的に聞こえにくくなったり、耳鳴りが生じたりすることがある

アミノグリコシド系抗菌薬

抗菌薬(抗生物質)の一種です。最近は使われる場面が減っていますが、結核や、ほかの薬が効きにくい細菌の治療で今も重要な役割を担っています。

白金製剤(抗がん剤)

がん治療で広く使われている薬です。なかでもシスプラチンは聞こえへの影響が知られており、治療中に聴力検査を行うことがあります。

ループ利尿薬

尿の量を増やして体の余分な水分を出す薬です。「ラシックス」はフロセミドの商品名です。

サリチル酸剤

アスピリンなどの解熱鎮痛薬です。少量のアスピリンは血液をさらさらにする目的でも使われます。

そのほか注意したい薬

  • バンコマイシンなどのグリコペプチド系抗菌薬
  • マクロライド系抗菌薬(影響は一時的なことが多い)
  • 一部の点耳薬・消毒薬:フラジオマイシン(ネオマイシン)を含む点耳薬や、ポビドンヨード液を耳に使った場合に影響が出ることがあります

薬剤性難聴は治る?回復しやすさは薬で違う

薬剤性難聴が治るかどうかは、原因になった薬の種類でおおよそ決まっています。

回復の傾向薬のグループ
薬をやめると回復しやすい(一時的)ループ利尿薬、サリチル酸剤、マクロライド系抗菌薬
回復しにくいことが多いアミノグリコシド系抗菌薬、白金製剤

回復しやすいタイプでは、薬の量を減らしたり、別の薬に切り替えたりすることで聞こえが戻ることが多いです。

回復しにくいタイプは、だからこそ早めに気づいて進行を止めることが大切になります。

ただ、がんや重い感染症の治療では、聞こえへの影響より治療を優先するべき場面もあります。どうするかは、主治医と相談しながら決めていきましょう。

もし聞こえが戻らなかった場合でも、補聴器や人工内耳など、聞こえを支える方法があります。

補聴器については”補聴器とは?初心者向けに種類や値段、選び方を完全ガイド“で

人工内耳については”人工内耳とは?対象者や手術費用、聞こえ方までわかりやすく解説“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。

薬剤性難聴に注意したい人

薬剤性難聴は誰にでも起こりうるものですが、特に次のような人は気にかけておくと安心です。

高齢の方

年齢とともに飲む薬が増えやすく、加齢による難聴と重なって薬の影響に気づきにくいことがあります。「年のせいかな」と思わず、薬を始めたタイミングと聞こえの変化を振り返ってみてください。

薬の量が多い・使う期間が長い方

薬剤性難聴は、一般に量が多いほど、期間が長いほど起こりやすくなります。シスプラチンでは、1日80mg/m²以上、総量300mg/m²を超えると聞こえへの影響が出やすくなるとされています。

腎臓の働きが弱い

薬が体に残りやすくなるため、影響が出やすいことがあります。

家族に「薬で耳が聞こえにくくなった人」がいる方

アミノグリコシド系抗菌薬では、生まれつきの体質(ミトコンドリア遺伝子の1555A→G変異など)によって、少ない量でも難聴が起こりやすい人がいることがわかっています。

この体質は事前の遺伝学的検査で調べることができます。家族に同じような経験をした人がいる場合は、治療の前に医師へ伝えておきましょう。

薬剤性難聴の予防と最新の研究

治療の前と途中で聴力検査をする

いちばん確実な予防は、治療前に聴力を測っておき、治療中も定期的にチェックすることです。

最初の状態がわかっていれば、小さな変化にも早く気づけます。抗がん剤や長期間の抗菌薬治療が始まるときは、「聴力検査は受けたほうがいいですか?」と主治医に聞いてみるのもひとつの方法です。

抗がん剤による難聴を防ぐ薬が登場

これまで薬剤性難聴には「起きてから治す」決め手がありませんでした。そんななか、近年注目されているのがチオ硫酸ナトリウムです。

シスプラチンの投与後に時間をあけてチオ硫酸ナトリウムを使うことで、がん治療の効果を落とさずに難聴の発生を減らせることが、子どもを対象にした臨床試験で示されました。

米国では2022年9月に、小児の固形がん患者向けに「シスプラチンによる聴器毒性のリスクを下げる薬」として承認されています。英国の公的医療(NHS)でも使われ始めています。現時点の対象は主に子ども・10代のがん患者さんです。

研究が進む「聞こえの再生」

傷ついた有毛細胞を再生させる研究も世界中で進んでいます。すぐに治療として使えるわけではありませんが、今後に期待したい分野です。

遺伝子治療については”難聴の遺伝子治療とは?赤ちゃんの難聴は治せる?現在の治療と最新研究をわかりやすく解説“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。

聞こえが気になったときにすること

  • 自己判断で薬をやめない:薬をやめることで、もとの病気が悪くなることがあります
  • 処方した医師か薬剤師に相談する:「いつから」「どんな音が聞こえにくいか」「耳鳴りはあるか」を伝えるとスムーズです
  • 耳鼻咽喉科で聴力検査を受ける:お薬手帳を持っていくと、原因を調べやすくなります

よくある質問

市販の頭痛薬を飲んでも大丈夫?

アスピリンを含む市販薬もありますが、ふつうの量を短期間使う範囲で心配しすぎる必要はありません。長く続けて飲む場合や耳鳴りが気になる場合は、薬剤師に相談しましょう。

薬剤性難聴でも補聴器は使える?

使えます。薬剤性難聴は感音難聴の一種なので、ほかの感音難聴と同じように補聴器で聞こえを補うことができます。

耳鳴りだけで、聞こえは普通な気がする。相談すべき?

耳鳴りは最初のサインになることがあるので、気になったら早めに伝えておくと安心です。

まとめ

  • 薬剤性難聴は、抗菌薬・抗がん剤・利尿薬・解熱鎮痛薬などの副作用で起こる難聴
  • 耳鳴りや電子音の聞こえにくさが最初のサインになりやすい
  • 利尿薬やアスピリンによるものは回復しやすく、アミノグリコシド系や白金製剤によるものは回復しにくい
  • 治療前後の聴力検査と、早めの相談がいちばんの予防
  • 抗がん剤による難聴を防ぐ薬など、新しい選択肢も出てきている

薬は病気を治すための大切な味方です。「聞こえにも影響することがある」と知っておくだけで、早めに気づいて対処しやすくなりますよ。

その他、難聴については”難聴とは?症状・原因・種類・治療法をわかりやすく解説【セルフチェック付き】“で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。

参考文献

重篤副作用疾患別対応マニュアル 難聴|厚生労働省

小児・10代の化学療法後の聴力低下防止にチオ硫酸ナトリウムをNHS承認|海外がん医療情報リファレンス

薬剤性難聴[私の治療]|日本医事新報社

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