難聴というと結構な人が親からの遺伝だと考える人が多いと思います。
私も難聴について勉強し始める前は漠然とそんなイメージを持っていました。
先天性難聴の約半数は遺伝子が関係しているといわれています。しかし、多くは劣性遺伝のため、両親ともに聞こえていても子どもが先天性難聴になることがあります。
さらに先天性難聴は1,000~1,500人に1人の割合でみられる、比較的身近な先天性疾患です。
新生児、つまり先天的な難聴について詳しく紹介していきます。
先天性難聴とは
先天性難聴とは生まれつき耳が聞きづらい状態のことことをいいます。
先天的な難聴でも程度は異なり、全く聴こえない場合(“ろう”といいます)やほとんど聴こえない重度難聴の人、かなり聴き取りづらい高度難聴などがあります。
先天性難聴は1000人から1500人に1人の割合で発症すると言われています。
先天性難聴の主な原因
先天的に難聴になる原因はいくつかあり、遺伝的なもの、病気が多いです。
主な原因について詳しく見ていきましょう。
遺伝子によるもの
先天性難聴の約半数は遺伝子が原因となります。
聴力に関係する遺伝子は100個ほどあると言われています。
その中でも先天性難聴に特に関わっているとされているのが次の3つです。
- OTOF遺伝子
- GJB2遺伝子
- SLC26A4遺伝子
わけわからん名前ばかりですね!
OTOF遺伝子はオトフェルリンというタンパク質の設計図です。
OTOF遺伝子について詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。
GJB2遺伝子はコネキシン26というタンパク質の設計図です。
GJB2遺伝子について詳しく紹介した記事があるので、ぜひご覧ください。
OTOF遺伝子もGJB2遺伝子もタンパク質の設計図で、どちらも電気信号の伝達に影響しています。
SLC26A4遺伝子はペンドリンというタンパク質の設計図です。こちらは内耳の発達に影響します。
遺伝子については、親が遺伝子検査をすることもできます。遺伝子検査についての記事もぜひご覧ください。
妊娠中の感染症
お母さんが妊娠中に感染症にかかることで、胎児に影響を与えるものもあります。
- サイトメガロウイルス
- 風疹
- トキソプラズマ
サイトメガロウイルスはヘルペスウイルスの1種で健康な大人が感染しても特に症状は出ません。ただ、胎盤を通して赤ちゃんに感染することがあります。
ただ、感染した赤ちゃんはもれなく難聴になるわけではなく、一部が感音性難聴を発症するケースがあります。
風疹は妊娠20週までに感染すると胎児にも感染すると言われています。
風疹の場合は難聴だけではなく白内障や心疾患の発症のリスクがありますが、難聴が1番発症しやすいと言われています。
トキソプラズマはウイルスではなく寄生虫になります。難聴も症状としてありますが、水頭症や視力障害が主な症状のようです。
出生時、出生後の要因
赤ちゃんが産まれたあと、赤ちゃんの体調によっても難聴になるケースがあります
- 低出生体重
- NICU入院
- 高ビリルリン血症
先天性難聴の種類
先天性難聴は産まれた時から聴き取りづらい状態全般をさすことになるので、それ自体が難聴の症状を表すわけではありません。
難聴にはいくつか種類があり、先天性難聴では次の3つの症状がみられます。
- 伝音性難聴
- 感音性難聴
- 聴覚ニューロパチー
簡単に解説しますね。
伝音性難聴は音が小さく聞こえる難聴です。
感音性難聴は内耳や聴神経などに障害がある難聴で、音は届いているのにその音が正しく脳に伝わらないという症状になります。そのため、イメージしづらいかもしれませんが音にモザイクがかかったように聞こえるようなイメージでしょうか。
聴覚ニューロパチーはそんな感音性難聴の1種で、少し出てきたOTOF遺伝子が変異することで電気信号を脳に送るタンパク質が生成できずに、音が脳に届かないという症状になります。
難聴の種類について詳しく紹介した記事があるので、ぜひ読んでみてください。
新生児聴覚スクリーニングとの関係
赤ちゃんが産まれると数日で新生児聴覚スクリーニングという音に反応するかどうかをテストします。
テスト自体はすぐに終わり、これをPassすれば音は聞こえているだろうと判断されます。
要再検査であるreferになったら難聴の疑いがありますが、産まれてすぐに検査を行うので耳にまだ羊水が残っていたりするとreferになる可能性があります。
そのため、この段階でreferになっても確定ではありません。
実際に行うテストというのはOAE(耳音響放射)とAABR(聴性脳幹反応)といいます。
新生児聴覚スクリーニングについては詳しく紹介した記事があるので、そちらもぜひご覧ください。
先天性難聴は治る?
現在は残念ながら先天性難聴そのものを治すことはできません。
今は補聴器や人工内耳を使い、治すのではなくあくまで聞こえやすいように補助するという状態です。
将来的には遺伝子治療などによって治療ができるようになる可能性はあります。
すでに海外では実験によって聴力が改善したという結果も報告されていて、かなり実用化が期待されるところまできています。
補聴器について詳しく紹介した記事があるので、そちらをご覧ください。
先天性難聴の子どもの成長
先天性難聴の子どもの成長で1番の懸念点は言葉の発育です。
全く音の聴こえない”ろう”や重度難聴の人は手話での会話をする場合が多いです。
また、中度から高度、重度難聴の人では補聴器や人工内耳を使うことで音が聞こえるので、日本語を音として学習することもできます。
早い段階で補聴器や人工内耳を装用することで、音で言葉を学習することができ、発話も学ぶことができます。
私の妻は後天性の難聴ですが、子どものころに難聴になっているので、ことばの教室に通い発話を練習しています。
難聴の症状が重い場合にはろう学校という選択肢もありますが、小学校では支援級がある学校もあります。
よくある質問
先天性難聴は遺伝する?
親が難聴だからといって、かならず子どもが難聴になるわけではありません。
両親が2人とも難聴でなくても、子どもが先天的に難聴になる可能性もあります。
新生児スクリーニングでみつかる?
残念ながらすべての難聴が新生児スクリーニングで見つかるわけではありません。ただ、高い確率で見つけることができ、早期発見は今後の子どもの発達のためにも重要です。
片耳だけでも先天性難聴になる?
はい。片耳だけの難聴もあります。
大人になってから悪化する?
すべての難聴が進行性のものではありませんが、成長するにつれて聴力が落ちる場合もあります。
また、環境が要因になり難聴が悪化する場合もあります。たとえばすごい騒音のある環境で仕事を続けるなど
まとめ
新生児の難聴について、心配する気持ちは痛いほどわかります。
ですが、私たち親がどうこうできる問題ではないのも事実です。
なかなか割り切れないとは思います。
でも少しでも子供が苦労しないように、情報を集めて早めに行動することも大切だとおもいます。
自分を責めてしまう気持ちはわかりますが、その分いっぱい愛情を注いで、元気に成長していきたいですね。
参考資料
岡山県新生児聴覚スクリーニングの現状と課題
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/47/4/47_4_379/_article/-char/ja/
当院における新生児聴覚スクリーニング後の精密検査
https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology1968/48/2/48_2_174/_article/-char/ja/
新生児聴覚スクリーニングから精密聴力検査へ
https://www.academia.edu/download/65325789/_pdf.pdf



コメント