聴覚障害者が困るシーンは様々あります。
複数人での会話や窓口、雑踏など枚挙に暇がありません。
そう、意外に気付かないのが電車のなか。
なかなか健聴者には気づきませんが、電車のなかは聴覚障害者にとってはかなり厳しい環境です。
補聴器や人工内耳をしているかたも多いですが、場合によっては補聴器をとってしまう方もいらっしゃいます。
補聴器をしているから大丈夫ということでもないのです。
難聴だと電車内ではどのような問題点が生じるのか、詳しく見ていきましょう。
電車内の環境
電車内でうるさいなぁと思うことはありませんか?
電車内は通常で80dB~85dB前後の騒音があります。
特にトンネル内はさらにうるさくなっていて95dB近くなることもあります。
必然的に地下鉄は通常の電車よりもうるさい環境であるといえます。
じゃぁその85dBっていうのはどのくらいの騒音なの?ということですが
目安は以下の通りです。
20dB・・・ささやき / 木の葉の触れ合う音
30dB・・・郊外の深夜
40dB・・・図書館
50dB・・・1m離れた位置で聞く換気扇の音
60dB・・・通常の会話
70dB・・・2mの位置で聞くセミの鳴き声
80dB・・・電車の車内
90dB・・・騒々しい工場の中
100dB・・・電車が通るときのガード下
110dB・・・2mの位置で聞く車のクラクション
120dB・・・ジェットエンジンの近く
こう見ると80~90dBというとかなりうるさい音だと思いませんか?
最近は音楽を聴いているひとも多く、そこまで電車の車内の騒音を気にする人は多くないのかもしれませんが、相当大きい音がしている環境であることがわかります。
ちなみに80dB以上はうるさくて我慢できない環境となり、85dB以上で我々の耳はダメージを受け、長時間その環境にいると難聴になってしまいます。
ここに人々の話し声や車内アナウンスが加わります。
我々がこの85dBの環境で話そうと思うとかなり大きめの声を出す必要があります。
あれ?でもそんなに電車内で大きい声出して話してるイメージはないぞ
と思いませんか?
実は我々は聞きたい音を選んで聞くことができるように脳が設計されています。
周りの雑音を小さくすることができるんですね。
自然にノイズキャンセルをしているのです。
しかし、難聴の方々はこの機能がうまく働かないので、我々とは電車内にいるときの感覚が違います。
電車内は難聴者にとって非常に劣悪な環境であることを理解していただけると嬉しいです。
ちなみに騒音の基準と目安はこちらでも確認できますので、よければ一度サイトを訪問してみてください。
騒音値の基準と目安騒音値はデシベル(db)という単位で示されます。
一度は聞かれたことがある単語かとは思いますが、具体的に何デシベルがどれくらいの騒音にあたるのかをご存知の方は少ないのではないかと思います。
聴覚障害が原因で車内で困ること
私たちは聞きたい音を選んで聞くことができます。
なのであまり車内アナウンスについてものすごく聞き取りづらいと思うことは多くないんじゃないでしょうか。
これは電車の路線にもよってしまうのでなんとも言えませんが・・・
ただ私たち健聴者で聞こえづらい車内アナウンスの路線があれば難聴の方々が聞こえづらいのは明らかですよね。
一度電車の窓口の応対改善のようなものをやらせてもらったことがあるのですが、その時にいろいろな方に窓口で聞き取りづらいと思ったことはありますか?
というアンケートを取ったことがあります。
ほとんどの方は聞き取りづらいと思ったことはないという結果だったのですが
高齢者の方々のほとんどで同じような意見をいただきました。
それが
”窓口はいいから車内アナウンスをもっと聞き取りやすくしてほしい”
でした。
難聴者というと、先天性難聴という小さいときから聞こえづらい方々を想像する方が多いと思います。
しかし、実情は後天性の難聴、特に加齢による難聴が非常に多いです。
乱暴な言い方になってしまいますが、程度はあれど高齢者はほとんど難聴であると考えていいぐらいです。
そういう方々の意見として出ているのですから、まず間違いなく車内アナウンスは難聴者にとって聞き取りづらいんですね。
そうすると、例えば人身事故などで電車が止まってしまった場合、難聴者や高齢者はなぜ電車が止まっているのか、いつ頃運転再開の見込みなのかといった情報が一切入ってきません。
また、初めて乗るような路線だと車内のアナウンスが聞こえないので常に、次は何駅につくのかといったことを気にしていないといけません。
今は携帯アプリの乗換案内とかもあったりするので、以前に比べたら困ることは減ったかもしれません。
しかし、不便であることに変わりはありません。
“難聴者には補聴器や人工内耳があるじゃない!”
補聴器してれば大丈夫!という考えは間違っています。
補聴器はその人の聞こえに合わせて調整をしています。
人それぞれどの高さの音が聞こえづらいかは違うんですね。
そのため、聞き取りづらい音をより大きく聞こえるように調整しています。
しかし、補聴器は聞こえづらい音だけを大きくしてくれるわけではありません。
当然聞こえている音も大きくなってしまいます。
そうすると電車のようないろいろな高さの音が混ざっているような環境では、逆に補聴器はうるさすぎてつけていられないという人もたくさんいます。
そういう方は補聴器を外して、次が何駅なのかということに常に注意していたりします。
ただでさえ聞こえづらいのに補聴器を外してしまったら、間違いなく車内アナウンスは聞こえないですよね。
このように、補聴器があれば大丈夫ということは決してありません。
私たちにできることと今後の鉄道に望むこと
補聴器を取ってしまっていると周りの人からは難聴者だとは見た目からは全くわかりません。
そういう状況のためにも聴導犬を連れていてくれるとすぐにわかるのですが、残念ながら聴導犬はまだまだ広がっていません。
もし、電車が止まってしまったときに、状況を把握していなさそうな方がいたらその人はもしかしたら難聴者かもしれません。
ぜひ、状況を筆談でも携帯に文字を打ち込むでもいいので、助けてあげてほしいと思います。
こういう状況ですぐに難聴の人に情報を共有できる音声アプリは筆談よりも簡単! スマホの音声文字変換アプリまとめという記事で紹介しているのであわせてご覧ください。
また、鉄道会社には車内アナウンス以外にも現在の状況がわかるような仕組みづくりを検討していただきたいものです。
そういう意味では、まだまだバリアフリーは全然進んでいないといえるかもしれませんね。
まとめ
電車内が難聴者にとって厳しい環境であることが少しでもわかってもらえると幸いです。
ただ、聴覚障害があるかどうかは見た目では非常にわかりづらいです。
盲導犬は知っているひとも多いと思いますが、聴覚障がい者の補助をしてくれる補助犬を聴導犬といいます。
聴導犬の数はあまり多くありませんが、もし聴導犬を連れている方を見かけた際はなにかトラブルがあった場合是非状況を教えてあげてください。
また聴導犬については難聴者を支援する補助犬 聴導犬とはという記事で紹介しているので、ぜひ聴導犬についても読んでみてください。
また、鉄道会社には電車の環境は難聴者にとって非常に厳しい環境であるということを理解してもらい、車内アナウンス以外の情報伝達の考察や車内アナウンス用のスピーカーの見直しなどいろいろ検討していただきたいものですね。
電子メモなんかも用意しておくと、なにかメモしたいときにパッとメモが残せる上に、こういう状況になったときにささっと状況を書いてもらえると難聴者にとってはとてもありがたいです。
100均などでも買えるので、ぜひ1つ持ち歩けるといいですね。
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