あなたは失語症という障害を知っていますか?
読んで字の如く、言葉がうまく扱えなくなってしまう障害です。
これは歳をとって、ものの名前や場所の名前が思い出せなくて
「あれよ!あれ!」
みたいなこそあど言葉になってしまうやつとは全然違います。
失語症の症状については失語症の症状についてという記事をご覧ください。
失語症は脳の言語中枢のトラブルによって起こってしまいます。
具体的にどのようにして失語症になってしまうのか、原因をみていきましょう。
言語中枢を損傷する疾患が原因
失語症は脳の言語中枢の損傷などにより、発症します。
脳の損傷が原因なので、失語症は後天的な障害ということですね。
この脳の損傷がどのようなタイミングで起こるかというと
言語中枢を損傷する疾患を患った時です。
この脳疾患には次のようなものがあります。
脳梗塞
脳出血
くも膜下出血
脳腫瘍
外傷
脳炎
などなど
このように脳に何かしらの衝撃やトラブルがあった場合、言語中枢を傷つけて失語症になってしまう恐れがあります。
私たちは普段何気なく話をしていますが、実は話をするためには結構なプロセスを経ています。
話を聞く
↓
音と文字を照合
↓
語句を照合
↓
意味の理解
↓
何を話すかを決める
↓
音の選択
↓
音を並び替える
↓
声に出す
↓
話を聞く
地味にプロセスが多いですよね。
脳疾患によって、このどれかのプロセスに障害が生じてしまうと失語症の症状が出てきます。
また、どのプロセスに障害がでるかによって、失語症の症状も変わってきます。
言語中枢とは
そもそも言語中枢とはなんぞや!というところですが、私たちの脳には2つの言語野があります。
この2つの言語野をブローカ野とウェルニッケ野といいます。
面白いことに全員脳の同じところに言語中枢があるわけではなく、右利きの人の9割が左脳に言語中枢があります。
対して左利きの方は7割程度の人が左脳に言語中枢があると言われています。
もしかしたらテレビの医学番組などでみたことある人もいるんじゃないでしょうか。
そんな言語野のブローカ野とウェルニッケ野ですが、どちらも見つけた人の名前がついています。
ブローカ野はブローカさんが、ウェルニッケ野はウェルニッケさんが発見したものです。
どちらも同じ言語野ですが、2人とも失語症の研究をしていて同じように原因を探していたところ、脳の一部に言語を司るところがあることがわかりました。
それがブローカさんはブローカ野、ウェルニッケさんはウェルニッケ野の部分でした。
同じような研究をしていてたまたま違う場所の言語野だったわけですね。
ブローカ野は言葉を話すための場所
ウェルニッケ野は言葉を聞いて理解する場所です。
どちらかの言語野にトラブルがあると失語症の症状が見られることになります。
損傷による失語のタイプ違い
言語野には2つの種類があり、これがブローカ野とウェルニッケ野です。
このどちらにトラブルを抱えているかによって失語の仕方に違いがあります。
ブローカ野とウェルニッケ野では言葉を話す機能と言葉を理解する機能でそれぞれ役割が違うからですね。
ブローカ野の場合は非流暢なタイプで復唱が上手くできず、聴覚は良好です。
ウェルニッケ野の場合は流暢なタイプで復唱は苦手、聴覚も不良な場合があります。
この流暢、非流暢は脳の前の方か後ろの方がで分かれています。
ブローカ野は脳の前の方なので非流暢タイプ、ウェルニッケ野は脳の後ろの方なので流暢タイプです。
ブローカ野とウェルニッケ野の機能がわかっていれば、納得のいく症状だと思います。
ブローカ野は言葉を話すための機能を果たしているので、聞くこと/理解することは問題ありませんが、話すことはうまくできないので非流暢になります。
ウェルニッケ野は言葉を理解する機能を果たしているので、聴こえていても理解できなくなってしまい、聴覚にも支障が出ますが流暢タイプになります。
このように、担っている機能が違うため症状にも違いが現れます。
このブローカ野とウェルニッケ野が原因による失語をそれぞれブローカ失語、ウェルニッケ失語といいます。
この2つを含め全部で7タイプの失語があります。
ブローカ失語
ウェルニッケ失語
伝導失語
超皮質性運動失語
皮質下性運動失語
超皮質性感覚失語
皮質下性感覚失語
これは話すプロセスのどこに障害が出るかによって、タイプが変わってきます。
タイプとプロセスの関係は次の通りです。
ブローカ失語 |
理解は保たれるけど、自発的に話したり復唱ができない | |
ウェルニッケ失語 |
話を理解できず、復唱もできない 自発的に話すことができるが、話したい内容がまとまらない | |
伝導失語 |
理解も発語もできるけど、話したい内容がまとまらない | |
超皮質性運動失語 |
自発的に話さないけど復唱はできる | |
皮質下性運動失語 |
自発的に話そうとしないが、書く能力は保持される | |
超皮質性感覚失語 |
話しかけられたことが理解できない 復唱できるがその意味はわからない 自発的に話すことができるが、話したい内容はまとまらない | |
皮質下性感覚失語 |
自発的に話そうとしないけど、話したいことを話すことができる |
どこに障害があるかによって、何が難しくなってしまうのかを理解しましょう。
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